おもしろかった本:「カードゲームで本当に強くなる考え方」

学習系
『カードゲームで本当に強くなる考え方』茂里 憲之|筑摩書房
筑摩書房『カードゲームで本当に強くなる考え方』の書誌情報

よく晴れた日の放課後、近所の公園に集まって屋根付きの大きなローテーブルを占拠し、即席の決闘(デュエル)場を拵えて日没までボルバルザークで殴り合い続ける、そんな経験を持ったことがある平成一桁生まれの男の子であれば間違いなくタイトルだけで心を掴まれるであろうこの本では、例えば遊戯王でこういう局面でこういう手札を持っていたらどういうカード捌きをすれば勝率が上がるとか、デュエル・マスターズでシールドを破壊するかステイのどちらを取れば得をするとか、そういったミクロな戦術論は全く出てこない

この本で述べられている主張は一貫してきわめて本質な考え方を展開していて、数理的な知識(主に統計学)を用いてカードゲームの構造そのものに迫っていたり、対戦の局面における意思決定の落とし穴に対して行動経済学認知心理学の側面から裏付けを試みていたり、プレイングを上達させるためのプロセスにおいてチーム活動と言語化を活用することの重要性を説いていたり、デッキづくりでは生態系におけるミドリガメの強さまで持ち出して構築論を語るなどしている。

ひと呼吸ぶん読み進めるたびに各分野の用語がとめどなく出てくる、まるでアカデミー賞で最高の栄誉に輝いた監督がスピーチでスタッフの名前をひとりひとり読み上げるように用語が出てくる、キャンドル問題?流暢性バイアス?そんな呪文カードあったかあ?と思ってしまいそうな、そんな筆者の強靭な教養プールに感動しつつ、とどのつまりこの本はカードゲームという「遊び」でも、違いを生み出せるのは幅広い教養に裏打ちされたセンス:研ぎ澄まされた勘であるという示唆を与えてくれる。
そして筆者が提示した統計学、行動経済学、心理学、あとはミドリガメの例え話がぽんと出てくるような、より普遍的な知識(イメージとしては中学高校レベルの理科社会全般)からなる「教養デッキ」はカードゲームに限らないド本質のセンスを育て、日々の仕事における意思決定やリスク評価からチーム活動まで、めいめいの問題解決に脳溢血を起こしそうなほど悩む自分を必ずや助けてくれるだろうという思いに繋げてくれる。

ということで善は急げと、とりあえず「予想通りに不合理」をポチった。自宅の本棚にリバース守備表示のまま眠り続けることのないように読んでいかねば。

予想どおりに不合理 ―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」―
行動経済学ブームに火をつけたベストセラー! 「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」「同じプラセボ薬でも高額なほうが効く」――。人間…

 

おわり

コメント

タイトルとURLをコピーしました